
「山の上で本屋やってます」
そう言うと、大抵の人のリアクションが「は?」である。
という事で、その「は?」に対する答えを綴りたいと思います。
◆何故、山の上で本屋をやるのか?
色々思う所があり、やっています。当たり前ですが。
この際でありますので、全て説明しようと思います。
①落語「遥かなるたぬきうどん」への憧れ
のっけから飛躍で恐縮です。話は大好きな落語に飛びます。
三遊亭円丈師匠の創作した落語に「遥かなるたぬきうどん」という噺があります。
どんな話かと言いますと、
ヨーロッパアルプスのマッターホルンの山頂に
たぬきうどんの出前を頼まれたうどん屋とそれを頼んだ客の壮絶なドラマであります。
この噺の馬鹿馬鹿しさを実際にやってみたら、どれだけ馬鹿らしいのだろう。
そんな好奇心が動機の1つとなっています。
②林業で身についた体力を有効利用したい
林業をやっていると自然と足腰が鍛えられます。
4キロほどあるチェーンソーや燃料、手工具、弁当など結構な荷物を身につけて
けもの道すらない現場をウロウロするのです。かなり鍛えられます。
ある日、本棚ひとつ分なら担いで登れそうと思いました。
山で杣(木こり)が本棚担いで本屋やってたら、まぁ、面白そうかなと思ったのです。
③山の上での憩いの時間
杣になる前から山登りは好きでした。
しかし、登山者の多くは頂上につくやいなや下山をし始めるのです。
いわゆるピークハントってやつですね。
まぁ、登る山や時期、時間帯によっては長居していては遭難につながったりもするのですが、、、
そうだとしても、もう少し「山で憩う」って事をしたらもっと楽しいよ?
そんな提案のつもりです。
↑山頂での立ち読みの実際の様子(立ち読み大歓迎!!)
そんな訳で頂上に本屋でもあれば、立ち読みでもしてくだろうし
「山で憩う」の一つの提案になるのかなと考えております。
④実はブルーオーシャン戦略の実践
本屋であるからにはビジネスであります。
ビジネスには戦略が必要です。
普段ビジネス書には疎い私がたまたまチラ見したビジネス書にいい事が書いてありました。
“競合他社がひしめき合っていたら、そらその中に埋もれてしまうし、
苛烈な競争に巻き込まれるので勝ち目はないよ?(レッドオーシャン)。
であれば、競合他社がいない海(ブルーオーシャン)に行けば、そもそも競争が起きない。
つまりは一人勝ちできるのだよ。”
これだ!山の上で本屋にあった事がない。
山の上だけど山の上はブルーオーシャンなのでありました。
そんな緻密な計算があり、山頂で本屋をしているのです。
しかし、競合他社もいないかわりにお客さんもあまりいないのが目下の課題です。
⑤売名行為
有名になるとどうなるのか?
それを知りたいと思いました。
上でも述べた通り、本屋を山頂でやる人は今の所、本屋業界にはいません。
言うなれば、ツチノコ位に珍しい珍商売であります。
得てして、世間は珍なるものを珍重する傾向があるので
山頂本屋という珍商売をしていたら珍重が珍重を呼び、有名になれるかもしれません。
しかし、有名というのは一体何人に知れていたら有名なのでしょうか?
有名になる以上にそちらの方が気になってきた今日この頃です。
◆どうやって山頂本屋をやっているのか
まず、山選びです。
基本的に信州の山に出店することにしています。
(ちなみに昨年、故郷の東京の陣場山にも進出をしました)。
写真に「信州ふるさと120山」を頼りにしています。
地元の人に愛されて登られている山を主に狙っています。
頂上まで3時間位を目安に選んでます、それ以上だとさすがに身の危険を感じるので。
↑このように背負子に作りつけた本棚を担いで毎回「搬入」という名の登山をしている
背負子という道具がありまして、それに本棚を作りつけています。
本のサイズによるけれど、40〜50冊くらい入ります。
重さは計ってないけど、多分12〜13キロ。そこに個人装備を足して、15キロぐらい?
そこそこに重いので、毎回登っていて、
「何でこんな辛い目に合わなきゃいけないんだ」
そういう自分に向けてのノリ突っ込みをするのが恒例になっています。
↑登り終えてから辛い目に会う事もありました
↑山頂本屋の開店風景
山頂に着いたらお客さんの邪魔にならない、
でも、目立つ所にお店を構えます。
準備が出来たら、ぬぼーっとして話しかけられるのを待ちます。
そうしていると、大抵話しかけられるというツッコミを受けます。
お客さん「何をしてるのですか?」
私「本屋をやっています」
お客さん「は?」
という事になり、ここまで書いてきた事を説明するのです(笑)
でも、本屋がある事によってコミュニケーションが生まれやすくなるなぁと思うのです。
知り合えない人と出会えるのが山頂本屋のいい所なのです。
さて、今年も来月あたりからボツボツ登り始める予定です。
それでは、いつか、どこかの山の上でお会いしましょう。