2/23 長峰山山頂書店

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ぽつーーーーーーーーーーん。

地球規模で考えたなら…

「今、この地球上で山頂書店を開いている人間は私の他に何人いるんだろう?」

自分以外に誰もいない長峰山の山頂で私はそう自問していた。

人類は確か60憶人位いるはずだから、けっこういそうな気がする。

地球規模で考えたなら、きっと私(山頂書店)は独りじゃない。

長峰山の山頂は広く、そして見晴らしがよい。故に時に寂しい。

しかし、現実とは残酷なもので、どう見ても私の周囲には私以外に人間がいない。

そしてトンビが1羽気持ちよさそうに風に乗り舞っているのだった。

遡ること2時間前のこと…

「よぉ~~し、登るか」

自分以外の車が5,6台駐車してある長峰山登山口で、私は意気込んでいた。登山口の車=登山者の車=登山者がいる=お客さんがいる、という事だからだ。

長峰山の登山道(長峰荘起点のルート)はとても歩きやすい。

しかも、とても温かである。例年の2月末ではこんな気温は考えられない。今年の信州の冬はとても温かなのだ。

登山道は木漏れ日に満ち、3月くらいの様相を呈している。私の心も希望に満ち溢れいた。こんな陽気なら、さぞ登山者(=お客さん)が山頂で寛いでいることであろうと。

登山の余裕は周りを観る余裕を与えてくれる。キレイなものを発見

登山口から50分くらい登ってきただろうか、舗装された林道を横切るところまでたどり着いた。陽気のおかげで汗ばむくらいに体が火照っている。

ここから山頂まで10分もかからなかったはず。

長峰山山頂書店開店!!

登り始めから約1時間で登頂した。ちらほらと登山者がいる。ちょうどお昼時なので皆、お弁当を広げいる。

空腹を感じていたが、まずは開店だ。

長峰山山頂書店の風景。広々とした山頂である。

「杣Books、開店しましたよー」と心の中で呟いてみた。大声で「イラッシャイマセー」なんて言うのは山頂では野暮なのだ。

男は黙して本屋、この心意気である。

腹が減っていたのでコンビニで買ってきた黒糖ロールマーガリン入りなどを食べる。

誰も来ない。

もの足りないのでこれまたコンビニで買ってきたスニッカーズを食べる。染み入る旨さだ。「お腹が空いたらスニッカーズ」は伊達ではない。

誰も来ない。


『ミクロコスモス』、コケの写真集を眺めて悦に浸る。人が来なければ、本を開けばいいのだ。。。。

誰も来ない。

自分の店(本棚)を客観視する。

もしかした、場所がいけないのかもしれない。店(本棚)の位置を変えてみる事にした。移動型書店はこういう時自由度がすこぶる高いのだ。10m位移動してみた。

誰も来ない。

なんかシュールになってしまった。

もしかしたら、私が店(本棚)のそばに居すぎるのがいけないのかもしれない。変なプレッシャーを人に与えているのかもしれない。

本棚から10m程離れてみることにした。ちなみに普段は1m以内にいる。

誰も来ない。

林業ギアは山頂書店ギアでもあるの図。

帰ることにした。

長峰山登山道書店開店!!

しょんぼり。

しょんぼりが服を着て山から下りている。

それは私。まさに私。

「俺の何がいけなかったのだろう」と自問しつつ歩いていたら、

「あら!!何背負ってるの?」とおば様3人組に声をかけられた。

「ああ、さっきまで山頂で本屋をやっていたのです。でも、誰も来ないから閉店して下山しているのです」と正直に答えた。

「なにそれ、面白いじゃない。どんな本があるか、見せてよ」

内心メンドイと思いつつも、これも面白くてアリだなと考え直し、荷を下ろし本棚を開いた。

4名様お買い上げ~~♪

買ってくれた。

買ってくれたのみならず、通りかかった男性登山客まで巻き込んで彼にまで本を買ってもらった。

なんとありがたいことであろうか。山頂書店冥利に尽きる。

杣Books始まって以来、登山道で開店するのは初めての事であった。初めての事は面白い。

今後は本棚を背負っているときは

「いつ何時誰の要請でも開店する」

という心構えで臨みたいと思う。本屋的猪木イズムである。

山はドラマチックだなぁ。

面白いな、ホントに。

という長峰山山頂書店であった。

おしまい。

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