
憧れていた。
でも、登らずにいた。
それが子檀嶺岳。
青木村のお山です。
いざ憧れの山へ。
青木村に子檀嶺岳という山がある。魔法使いのとんがり帽子のとんがり部分がヘコッとしたような(たぶん伝わらない…)面白い形をしている。
上田界隈のたいてい山に登ると「あ、子檀嶺岳だ」とわかる。たいていの山から発見できるという事は子檀嶺岳の山頂からの眺めは開けてるはず。いつかあそこでも開店しよう、そうしよう。
…と思っていたら3年も経っていた。近いから、近い故に登らない。山国・信州あるあるだ。
しかし、もはや先延ばしにはすまい。

今日登らなきゃ、いつ登るの?
快晴。ぽかぽか陽気。
けれども、登山口には私の車以外は1台も駐車されていない。
「今日登らなきゃ、いつ登るんだい?」
独りぼっちの登山口で世間にむけ、心のなかでそう呟いていた。
今日も1冊も売れないかもしれない。。。


春の山の匂いがした。
甘くて香ばしい。それにアカマツ林の特有のアカマツの香りが加わる。
春である。
アイゼン忘れて、ヤベーヤベー
たおやかな気持ちで登って、搬出用の林道のところまできたら道に雪がうすく積もっていた。
たおやかな気持ちでぼーっとしてたのか、いつの間にやらヒノキの林になっている。暗い。。。ので、更に雪が多くなった。

そのヒノキの林を抜けたら、今度は登りがややキツくなってきた。
足元の状況がかなり微妙である。
「アイゼン、アイゼン」と去年仕事用に買った6本爪(このスペックはこの山ではやりすぎかも)を出そうとして、すぐに忘れた事に気付いた。
ぐわぁー、しまったーと思ったが登り続けた。
結局、登れたけど軽アイゼンは必須。登りも下りもかなりヤバかった。

絶景を借景、それがカッケー
登山口から1時間強なのに足元に神経をつかったからゼェゼェな感じで登頂。
誰もいない。



人が来た、そして売れた。
「ああ、こんなにも気持ちのいい本屋なのに誰もいないなんて」
いつも通り、そう嘆いていると何やら鈴の音がしてきた。
人だ、登山者だ、お客さんだ!!
「本屋やってます、立ち読みでもしてってください」

この次も他の山に登るらしい。タフガイ。
立ち読みしてくれた。

で、買ってくれた。とても、とてもありがたい。
それにしても、山頂で本を買ってもらえると本当に驚く。
「本気ですか?」と。
「正気ですか」と。
幾度となく買ってもらっているのだけど、毎回新鮮に驚く。本当に。
これはどういうことなのだろうか。


…などといつもながらの驚きの意味を考えていたら、群馬は高崎から来られたというご夫婦に一冊お買い上げいただいた。
ありがたいなぁ。
でも、何で山頂でわざわざ本なんて買うんだろう…不思議だなぁ。
自分で仕掛けておきながら、その意味するところがわからない。
されども面白い。
そう「わからないは面白い」のだ。
子檀嶺岳、いい山だったなぁ。
また本屋やりにいきます。