3/16 独鈷山山頂書店

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人は何故山に登るのか。

それが、少しだけわかった独鈷山。

私は何故山頂で書店を開くのか。

それは、やっぱりさっぱりわからなかった独鈷山。

すぐそこの遠い山。

駐車場に2台も駐車してある!!

登山口の駐車車両、またの名を「希望」という。

ここは独鈷山・宮沢ルートの登山口駐車場。

独鈷山は上田市の山だからいつでも登れるわい、とタカをくくって登らずにきた山である。

その独鈷山駐車場に私以外に2台の車が駐車してある。つまり、お客である登山者がいる証だ。

支度をして登り始める。この駐車場から獣害防止のゲートをあけて、2,3分歩くと登山口に着く。

こ、こわい。滑落してる人が多いんだろうなぁ。

何故だか近所というだけで侮りがちだ。しかし、何故近所だからというだけで人は侮ってしまうのだろう。謎である。

ともかくも、侮れない事を理解して登り進める。

沢沿いをつめていくルート。ガラガラしてる。

「滑落事故多発」の文言のおかげか、道がガラガラしてる印象が強まった。沢をつめていくルートだからかもしれない。

でも、なんか今日はやたらと息が切れる。

干支と一緒に登ってく。

ひつじさん。

定期的に祠があるのに気付いた。

子、丑、寅、辰、巳、、、、干支だと気付くのに「辰」までかかった。

山の道標は色々あるけど、干支って初めて。こういうので残りの道程がわかるのはありがたい。

ということで、今日は干支と共に登っていくのだ。

沢沿いなのでミソサザイがさえずっている。

春だなぁ、と思う。

スギとカラマツの林。あんまし見かけない組み合わせ。

しばらく進むと水音もなくなった。鳥のさえずりもなくなった。

自分が発する息切れと足音しかしない。静かだ。

「私にはわからないわ」と言われる。

前方からチリンチリンと鈴の音が聞こえてきた。女性の登山者だった。

「こんにちは」と挨拶をした。

「その背負っているのは何かしら?」と聞かれる。

「本棚です。これから山頂で本屋を開くのです」と答える。

「ああ、そうなの。私にはわかないわ。気をつけて」と返された。

その反応に少し傷つき、すこしムッとする。

が、すぐに何でやっているか、自分でもわからない事に気付く。

「わからないからやってるんだなぁ、これ。」と思う。

俺にもわからないのに、他人様には更にわからないだろうなぁ。

先ほどの女性登山者の反応も無理からぬ事であるよなぁと思う。

にしても、登りがキツイ。近所なのに。

滑落多発は伊達じゃない。

やっぱりキツイ。

俺のコンディションが悪かったんじゃなくて、道の傾斜がキツいんだった。

傾斜もさることながら、落ち葉が積もっているのがキツい。

滑るし、木の根っこを覆っているので躓くし、道幅が狭い。

この三重苦。滑落が多発するわけだ。納得。

こちとら、無駄に本棚などを担いでいるので更に始末に悪い。

身体が振られるのでこういう道とは相性が悪い。

慎重は疲れる。

トリ!!我が干支である。

道のヤバさは「酉」まで来ると和らぐ。

道幅は太くなるけど、傾斜も若干ゆるくなる。あー、疲れた。

「酉」から10分くらいで稜線というか鞍部に出る。

平って落ち着く。

平で落ち着く。

ここから頂上まで3分。疲労感がハンパない。

小鳥と俺しかいない、という状況。

塩田平を眼下にしながら開店。

登頂即開店。

曇ってるけれど遠くまでみえる、気持ち良い。

そこへ登山者が登ってきた。

風景に見入っている。

邪魔しては野暮だと思って、私も風景を見入る。

よきかな、よきかなと悦に入ってたら、登山者は下山してしまった。

声をかける間もなく…

そして、山頂にいる比較的目に付くサイズの動物は小鳥と俺だけになった。

自分の住んでるところを俯瞰する。

自分のいる土地。

しょうがなく独りぼっちなので風景をみる。

山があって、川が流れていて、ため池があって、電車が走っていて、

あの裏側に俺の家があるかなとぼんやり眺めていたら…

「この環境で俺は生きているのか、そうか、そういうことか」

…と何かが納得できた。

たぶん、これが、この納得を得るのが、山に登る理由の一つなんだろうなぁ。

自分の生きている環境を身体を使って俯瞰してみること。

己が何に生かされているのかを身体で知ること。

馬鹿になれ

いくら待っても人が来ない。

いつの間にか小鳥もいなくなってしまった。

馬鹿だなぁ、俺。

何やってんのかなぁ、俺。

山のてっぺんで、独りで。

…と思っていたら、この状況、この心境にぴったりの本があることに気付いた。

馬鹿になれ

とことん馬鹿になれ

恥をかけ

とことん恥をかけ

かいてかいて恥かいて

裸になったら

見えてくる

本当の自分が

見えてくる

本当の自分も

笑ってた・・・・

それくらい馬鹿になれ

『アントニオ猪木詩集』より

そうだった、そうだった。

俺は馬鹿だった。

まだ自分を笑いきれてないなぁ。

ああ、寒い。

雪が舞ってきましたなぁ。

帰ろう。

山に関して思索が深まった独鈷山山頂書店でした。

今回も一冊も売れなかったなぁ。

おしまい。

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