
最近開店すれども本が売れない。
悪い流れを断ち切るべく、
人が来そうな見晴らしの山へ行くことにした。
目指すは千曲市・鏡台山。
売るのだという断固たる決意と共に…
独鈷山、海から一番遠い地点と本が売れていない。
由々しき事態である。
これでは世間様に山に本棚を担ぎ上げて喜んでいる頭がおかしい人とおもわれかねない。
本を売りたい。とても売りたい。かなり売りたい。
という事で、人が来そうな山として私が白羽の矢を立てたのが
鏡台山なのである。
ガイドブックに載っていた写真が素晴らしかったのだ。
北アルプスの白い峰々が青空に一本白い線を真横に引いて「まるでラインダンス!!」とその写真のキャプションに書いてある。
北アルプスのラインダンス、とても観たいではないか。
鏡台山山頂はラインダンス観たさの登山者でごった返しているに違いない。
我が商機は鏡台山山頂にあり!!
期待を胸一杯に膨らませ、意気揚々と登山道に降り立ったのである。
人はおらずも登るべし。

登山口駐車場には1台も車がいなかった。。。。

で、おなじみの熊注意看板。
注意喚起は必要とは言え、こんな看板見たら登る気失せるわ。。。
…などとせん無い事を思いつつも独り身支度を整え登山開始。


登り始めて5分くらいの所になかなかのモミの木の倒木が登山道をふさいでいた。すごい迫力である。

モミの木をよけたら、分岐がある。
この先は急登で女坂と男坂があるという。
迷わず女坂を選択。
果たして女坂は全然女っぽくなかった。
しいて例えるならば、
ミスター女子プロレスこと神鳥忍を思わせる急登であった。
「神鳥忍坂」と改名した方がいいと思います、この坂。
ま、しかし、そんな長い登りではないのでなんとか登りきると、
傾斜も緩やかになり。
明るい尾根歩きな感じになる。春の山の香ばしい匂いが心地よい。
店を開いても一人。。。
登山口から50分ほどで山頂に着いた。

山頂からの眺めである。
青空に北アルプスの白が横一線に走っている、まさにラインダンス。
名に偽りなし!!
が、人もなし!!
山頂は全然ごった返していないのであった。
ごったの「ご」の字も感じさせない、それは静かな山頂である。
例により、私しかいない。


よい本を持ってきたのだけどなぁ。
いやいや、この天気だし、この眺めだし、風も吹いてないし、
きっと人は来るはず。きっとだ。
何かを求める心山に放つ

仕方がないので本を手に取る。
尾崎放哉句集である。パラパラとする。
何かを求める心海へ放つ
尾崎放哉句集(岩波文庫)
ハッとした。
売ろう、売ろうという執着が杣Booksを客足から遠ざけているのではないか。
尾崎放哉センセーからの天啓のように思われ、売る気を放棄。

これまた名作『ピンポン」を読むことにした。
読了した。とても面白かった。
もう13時になっているではないか。閉店しよう。
絵はがき売れました。
本棚を閉じ背負おうとした、その時。
私とは違うルートから登ってきた女性登山者が登頂したではありませんか。
記念撮影などをお手伝いしていたら、以前に太郎山で行き合ったことがあるというではありませんか!!
再び本棚を開き、本を見てもらう。
「うーん、せっかくだけど欲しい本はないわねぇ」
「あ、では、こんなんありますよ?」と絵はがきをおすすめして食い下がる私。

タフである。
という事で、絵はがき3枚お買い上げ♪
山に登った記念にお手紙を書いているとのこと。
まさしくの用途で嬉しいっす。
ちなみにこの描きは杣Booksのロゴおよび木の看板を作ってくれた、
友人のアーティストのムッシュの絵はがきなのです。
本は売れなかったけど、とりあえず連敗脱出。
何かを求める心を山に放った途端、成果が出た。
人間、欲かいちゃいけないんですね。
そんな学びがあった鏡台山山頂書店なのでした。
おしまい。